アクチュアリーの仕事とは?9

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保健や年金、金融などの多彩なフィールドで活躍する、数理業務のプロフェッショナル

アクチュアリー(Actuary)という言葉は「actus(公務の)記録員」を意味するラテン語の“Actuarius”を語源としています。“actus”は、英語の “records”を意味する単語です。ところが面白いことに、アクチュアリーを意味するイタリア語の“attuario”やフランス語の“actuaire”は、ラテン語と いうよりも、英語の“Actuary”に由来しています。これはアクチュアリーという“数理業務の専門職”の歴史と関係しているのです。

――きっかけは、17世紀のイギリス、ロンドン中心部でした。この頃、ある地域の住人たちが「仲間に万が一の不幸があった場合にも遺族の生活保護が できるよう、皆で毎月一定額を集めよう」という制度を設けました。しかし、誰かが亡くなるたびに組合員が減り、毎月の掛け金が次第に値上がりし ていったため、若い組合員たちの負担が膨らみ、この制度は結局約10年で廃止されてしまったのです。

それから数十年の時を経て、今度は不特定多数の人を対象とした「生命保険」という新しい事業が、イギリスに誕生しました。これは、かつて住人たち が作った「若者も高齢者も一律の料金を支払う」というものではなく、加入者の年齢や加入年数などに応じて毎月の支払額(保険料率)や保険料が変わ るというシステムでした。この生命保険事業を開始するにあたって、当時のイギリス社会の死亡率を確率論・統計学などを用いて解析し、毎月の支払額 や掛金率を算定する専門家たちが誕生しました。彼らこそが世界で最初に「アクチュアリー」と呼ばれた人々です。

人々にとっての“将来”は、常に不確定要素で満ちています。決して望まないような出来事も起こってしまう可能性はあり、そうした万が一の出来事は 人々に精神的、経済的な負担を強います。また、死亡のように「いつ起こるか分からないが、確実に起こる」出来事もあります。そうした“将来の出来 事”の発生確率を評価し、望まれない出来事の発生確率を減らすよう知恵を絞り、起こってしまった出来事の影響を軽減することを考える専門家がアク チュアリーなのです。

アクチュアリーは現在、生命保険事業や損害保険事業だけでなく、年金事業、共済事業、さらには企業の資産運用などの多彩なフィールドで活躍して います。

日本アクチュアリー会の資格試験に合格し、正会員として認定される必要があります

「アクチュアリーの仕事をしている人」を「アクチュアリー」と呼ぶこともありますが、普通、日本において「アクチュアリー」とは、日本アクチュ
アリー会の「正会員」を意味します。正会員資格取得のためには、日本アクチュアリー会が毎年実施している資格試験の全科目合格とプロフェッショ
ナリズム研修(初期教育)の受講が必須の要件です。

資格試験を全科目合格するためには、基礎科目となる第1次試験5科目、専門科目となる第2次試験2科目の計7科目に合格する必要があり、全科目合格
までには最低でも2年を必要とします。また、「実際にアクチュアリーとして働く」ことを前提としている点も、この資格の特徴です。実際、ほとんど
の正会員は、企業でアクチュアリー業務に携わりながら勉強を続け、試験に合格して資格を取得しています。

「保険計理人」や「年金数理人」など、職務によっては、日本アクチュアリー会の正会員であることで資格要件の一つを満たすものもあります。

現在、日本アクチュアリー会には5,000人近くの会員が存在しています。会員の大多数は生命保険会社、損害保険会社、信託銀行をはじめ、各省庁、
さらにはコンサルティング会社、監査法人、再保険会社など、多彩な分野で“数理業務のプロフェッショナル”として活躍しています。

アクチュアリー資格は、「保険計理人」や「年金数理人」の要件の一つとしてあげられていること、アクチュアリーが100年以上の歴史をもつ専門職
制度であることなどから、企業や社会からも高く評価されています。

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